主人公 葵真人の紹介



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  生まれと幼稚園時代






葵 真人(あおい まさと)は、産声をあげたその瞬間から、
まるで春先に咲いた花のように、柔らかく、可憐な空気をまとっていた。

生まれたときから髪はふわふわとした栗色で、
大きな黒目がちの瞳は、きらきらと光を宿していた。

「女の子みたいだねぇ」

誰もがそう言った。
親戚も、友人も、道行く人までもが。

だが真人は男だった。

小さな身体で、それを言葉にすることはまだできなかったけれど、
心のどこかで、確かに「自分は男なのだ」という感覚だけは抱いていた。

けれども、幼稚園に入る頃になると、
その小さな心にふとした違和感が芽生え始める。

「男の子は強くなくちゃ」
「男の子なんだから、泣いちゃだめだよ」

そんな言葉を聞くたびに、真人は小さく首を傾げた。

なぜなら、
真人は自分が「強い」と思ったことが、一度もなかったからだ。

ある日のこと。
幼稚園の帰り道、リビングのテレビでアクション映画が流れていた。

そのシーンに、真人は思わず目を奪われた。

銀幕の中で、スラリとした女性が、
逞しい男性兵士たちを次々となぎ倒していく。

ハイキック。
背負い投げ。
回転蹴り。

その動きは、あまりにも鮮やかで、かっこよかった。
男たちはひとたまりもない。
次々と吹き飛ばされ、倒れ伏していく。

真人は瞬きもせずに、それを見つめた。

男が、女に、負ける。
力で、押し倒される。

それは、彼の心に不思議な感情を呼び起こした。

驚き。
憧れ。
そして、言葉にできない微かな畏怖。

(どうして……女の人が、男の人を倒してるんだろう?)

真人は小さな胸の奥で、そんな疑問を抱いた。

けれど、誰に聞くこともできなかった。

ただ、テレビの中で闘う女性たちに、
手を伸ばしたいような、でも怖いような――
そんな奇妙な感情だけを、心にしまい込んだ。

そして、それはまだ小さな真人が知らず知らずのうちに歩み始めた、
自分自身の“運命の道”の、最初の一歩だった。



 

  小学校低学年編



春の空気がまだ冷たく、ランドセルを背負った子どもたちが、校庭を駆け回っていた。

葵 真人は、その中にいた。

華奢な体に、少し大きめの制服。

可愛い顔立ちのせいか、初対面の教師にすら「女の子かな?」と間違えられたこともあった。

真人は、走るのが苦手だった。

力も、あまり強くなかった。

体育の時間。

ドッジボールでも、鬼ごっこでも、

彼はいつも追いかけられる側だった。

ある日、クラスで「腕相撲大会」が開かれた。

「男子の部」「女子の部」と分かれていたけれど、

人数合わせで、真人は女子の組に入れられた。

最初の相手は、同じクラスの朝倉 彩音(あさくら あやね)。

活発で、笑顔が眩しい女の子だった。

机に肘をつき、手を組み、合図を待つ。

真人の手は、細く、温かった。

対する彩音の手は、思ったよりもしっかりとした感触だった。

「はじめ!」

先生の声が響いた瞬間、

真人の手は、あっという間に押し倒された。

あまりにも簡単に。

「えっ、うそ……」

真人は、目を丸くした。

周囲から笑い声が上がる。

「真人くん、よわーい!」

「彩音ちゃんのほうが強いー!」

真人は、顔を赤くして俯いた。

悔しかった。

恥ずかしかった。

けれど――

その胸の奥に、ほんの少しだけ、

奇妙な高鳴りがあった。

負けた瞬間、彩音の笑顔が、

まるで太陽みたいにまぶしく見えたのだ。

それからというもの、真人は、自分でも気づかないうちに、

運動のできる女の子たちに目が向くようになった。

バスケットボールで素早く動き回る子。

リレーで男の子を追い抜く子。

彼女たちの姿に、目を奪われるたび、

真人の中で、何かが育っていった。

それは、ただの恋でもなく。

ただの劣等感でもない。

強く、美しいものへの憧れと、

それに負けたいという甘美な感情。

真人自身も、その感情に名前をつけることができなかった。

ただ、胸が苦しくなるのを、そっと隠すことしかできなかった。

まだ、小学二年生の春だった。

けれど、葵 真人という少年は、

すでに、自分だけの秘密を、心に抱え始めていたのだった。




 

  小学校高学年編



葵 真人は、小学五年生になっていた。

背丈は伸びた。けれど、身体は相変わらず細く、
まるで細い枝のように、頼りなかった。

小さなころから――
真人には、ひそかな“意識”があった。

戦隊ヒーローものに登場する、冷酷で美しい女性幹部。
カンフー映画で、男たちを一蹴する女性スター。
アニメのなかで、圧倒的な強さを見せる女戦闘員たち。

男より強い女。

それらの存在に、幼い頃から、目を奪われずにはいられなかった。

「男は強くなければならない」と教えられながら、
なぜか心のどこかで、負ける側の男に、無意識のうちに自分を重ねていた。

フィクションの中の話。
――ずっと、そう思っていた。

だが、現実は、違った。

小学校の体育の時間。
相撲対決。

真人は、女子相手にも、次々と負けていった。

特に、クラスのリーダー格の女子――佐倉 真理(さくら まり)。
ショートカットがよく似合う、活発で、運動神経抜群の女の子だった。
彼女に勝てる男子は、クラスに一人もいなかった。

真人も例外ではない。
対戦すると、いとも簡単に押し出され、土俵を転がされた。

また別の日。
クラスのいじめっ子、木村が真人をからかい始めた。

「お前、女にも勝てねぇのかよ。情けねぇな!」

押され、引き倒され、泣きそうになった真人を――
助けてくれたのは、佐倉 真理だった。

「やめなよ。」

真理の短い一言に、木村はたじろぎ、引き下がった。
真人は、呆然とした。

助けられたこと。
女の子に、守られたこと。

そのことに、どうしようもない恥ずかしさと――
同時に、温かな安心感を抱いた。

(強くて、優しい……)

真人は、その瞬間、真理に対して、
それまでにないほどの尊敬と憧れを感じた。

しかし、成長するにつれて、真人はさらに思い知る。

女子たちは、身体つきも、変わり始めた。
丸みを帯びた肩。
引き締まった腰。
大きくなり始めた胸や、たくましい太もも。

それらすべてが、
華奢な自分より、ずっと――力強く、逞しく見えた。

喧嘩になれば、勝てるわけがない。
真人は、心のどこかで、そう確信していた。

しかも、うわさが立った。
「真理ちゃん、真人くんのこと好きらしいよ。」

そんな声が、校内に流れる。
真人と真理は、お互いに意識して、ぎこちなくなった。

嬉しい気持ちもあった。
だが、それ以上に、真人は戸惑っていた。

(僕は、彼女に守られた。
彼女の方が、僕よりずっと強い。
それでも、いいのか?)

答えは、出なかった。

そんなある晩。
真人は、偶然、テレビをつけた。

画面に映し出されたのは――
女子プロレスだった。

リングの中で、
女性たちが、全身を使ってぶつかり合っていた。

女性らしい丸みを持つ身体。
それでいて、驚くほどのスピードとパワー。

重心を低く落とし、力強く投げる。
技を受けても、すぐに立ち上がる。

その姿は、衝撃だった。

(これだ――!)

真人の中に、電撃のような感情が走った。

フィクションじゃない。
作り話でもない。

ここに、本当に、
「女が男より強く、美しく闘う世界」が、存在している。

それは、真人にとって、
それまで心に秘めてきた憧れと、恐れと、恋心と、劣等感のすべてを、
まるごと肯定してくれる光景だった。

だが、誰にも言えなかった。
友人の前でも、家族の前でも、
女子プロレスを好きだとは、口が裂けても言えなかった。

それは、真人だけの、密やかな秘密になった。

少年は、その夜、初めて自覚する。

自分が――
「強い女性」に憧れ、そして敗北を夢見る存在であることを。



 

  小学校高学年編



葵 真人は、小学五年生になっていた。

背丈は伸びた。けれど、身体は相変わらず細く、
まるで細い枝のように、頼りなかった。

小さなころから――
真人には、ひそかな“意識”があった。

戦隊ヒーローものに登場する、冷酷で美しい女性幹部。
カンフー映画で、男たちを一蹴する女性スター。
アニメのなかで、圧倒的な強さを見せる女戦闘員たち。

男より強い女。

それらの存在に、幼い頃から、目を奪われずにはいられなかった。

「男は強くなければならない」と教えられながら、
なぜか心のどこかで、負ける側の男に、無意識のうちに自分を重ねていた。

フィクションの中の話。
――ずっと、そう思っていた。

だが、現実は、違った。

小学校の体育の時間。
相撲対決。

真人は、女子相手にも、次々と負けていった。

特に、クラスのリーダー格の女子――佐倉 真理(さくら まり)。
ショートカットがよく似合う、活発で、運動神経抜群の女の子だった。
彼女に勝てる男子は、クラスに一人もいなかった。

真人も例外ではない。
対戦すると、いとも簡単に押し出され、土俵を転がされた。

また別の日。
クラスのいじめっ子、木村が真人をからかい始めた。

「お前、女にも勝てねぇのかよ。情けねぇな!」

押され、引き倒され、泣きそうになった真人を――
助けてくれたのは、佐倉 真理だった。

「やめなよ。」

真理の短い一言に、木村はたじろぎ、引き下がった。
真人は、呆然とした。

助けられたこと。
女の子に、守られたこと。

そのことに、どうしようもない恥ずかしさと――
同時に、温かな安心感を抱いた。

(強くて、優しい……)

真人は、その瞬間、真理に対して、
それまでにないほどの尊敬と憧れを感じた。

しかし、成長するにつれて、真人はさらに思い知る。

女子たちは、身体つきも、変わり始めた。
丸みを帯びた肩。
引き締まった腰。
大きくなり始めた胸や、たくましい太もも。

それらすべてが、
華奢な自分より、ずっと――力強く、逞しく見えた。

喧嘩になれば、勝てるわけがない。
真人は、心のどこかで、そう確信していた。

しかも、うわさが立った。
「真理ちゃん、真人くんのこと好きらしいよ。」

そんな声が、校内に流れる。
真人と真理は、お互いに意識して、ぎこちなくなった。

嬉しい気持ちもあった。
だが、それ以上に、真人は戸惑っていた。

(僕は、彼女に守られた。
彼女の方が、僕よりずっと強い。
それでも、いいのか?)

答えは、出なかった。

そんなある晩。
真人は、偶然、テレビをつけた。

画面に映し出されたのは――
女子プロレスだった。

リングの中で、
女性たちが、全身を使ってぶつかり合っていた。

女性らしい丸みを持つ身体。
それでいて、驚くほどのスピードとパワー。

重心を低く落とし、力強く投げる。
技を受けても、すぐに立ち上がる。

その姿は、衝撃だった。

(これだ――!)

真人の中に、電撃のような感情が走った。

フィクションじゃない。
作り話でもない。

ここに、本当に、
「女が男より強く、美しく闘う世界」が、存在している。

それは、真人にとって、
それまで心に秘めてきた憧れと、恐れと、恋心と、劣等感のすべてを、
まるごと肯定してくれる光景だった。

だが、誰にも言えなかった。
友人の前でも、家族の前でも、
女子プロレスを好きだとは、口が裂けても言えなかった。

それは、真人だけの、密やかな秘密になった。

少年は、その夜、初めて自覚する。

自分が――
「強い女性」に憧れ、そして敗北を夢見る存在であることを。



 

  中学時代



公立中学の門をくぐったとき、葵 真人は、自分の小ささを痛感していた。

上級生たちは、皆、身体が大きい。
肩幅も、声の大きさも、自分とはまるで違った。
真人は、相変わらず細く、華奢だった。
制服もどこか着られているようで、少し居心地が悪かった。
(ここで、やっていけるんだろうか――)
そんな不安を胸に、真人は中学生活をスタートさせた。

部活動を決める時期になると、
クラスの多くは、人気のサッカー部や野球部へと流れていった。
だが、真人は迷わず、それらを避けた。
ゴツゴツした体格の男たちの中に入る勇気はなかった。
レギュラー争いに巻き込まれることも、怖かった。

そんな真人に、山岳部の先輩たちが声をかけた。
「お前、身軽そうだな。一緒に登ろうぜ。」

山岳部は、地味な部活だったが、
そこにいた先輩たちは、驚くほど優しく、面倒見がよかった。
真人は、自然と彼らに惹かれた。
気がつけば、山岳部の一員になっていた。
山を登り、川を越え、汗を流す日々。
男子ばかりの静かな部活動の中で、真人は少しずつ、自信を取り戻していった。

学年が進み、三年生になったころ。
真人は、部員たちの推挙で、山岳部の主将に選ばれた。
不器用だった。
派手さもなかった。
それでも、誰よりも真面目に取り組み、
仲間たちへの責任を忘れなかった真人は、
自然と、信頼を集めていた。

そんな真人にも、心を大きく揺らす存在が現れた。
同じ学年の、陸上部のエース――篠原 沙耶。
長い手足に、快活な笑顔。
男子顔負けのスピードと持久力を持つ彼女に、
真人は、心を奪われた。

沙耶は、短距離こそそれほど速くなかったが、
長距離では無類の強さを誇った。
真人自身も、驚くほどマラソンには向いていた。
毎朝のランニングを続け、
地道な努力を重ねた結果――
学校のマラソン大会では、
男子部門で堂々の一位を獲得するまでになっていた。
(僕だって……やれば、できるんだ。)
そう思えたのは、この時期が初めてだった。
諦めない精神。
責任感。
それらは、この中学時代に確かに、真人の中に根づいていった。

けれど、心の奥にひそむ"もうひとつの自分"も、同時に育っていた。
あの夜、テレビで偶然目にした女子プロレス。
華やかなリングで闘う、女性レスラーたち。
力強いスープレックス。
滑らかなジャーマンスープレックス。
鍛え上げられた肉体が激しくぶつかり合う音。
それを観た瞬間、
真人の胸に電撃が走った。
(すごい……!)

強さへの畏怖。
女に負けたいという禁断の快感。
本能が震えた。
やられている選手に自分を重ね、
打ちのめされることに、甘い悦びを感じる。
真人は、自分のなかに潜むこの感情に、恐れすら覚えた。
だけど――
目を背けることは、できなかった。
それは、理屈ではない。
心が、本能が、求めるものだった。
真人は、静かに決めた。
(この秘密は、誰にも話さない。)
そしてまた、心の奥深くに、
そっと――鍵をかけた。

自分は、
「強い女性に惹かれ、負けることに悦びを感じる存在」なのだと。

誰にも言えない。
家族にも、友達にも。
だけど、確かに、ここにある。

これが、
葵 真人という人間の“核”なのだと。



 

  芸能事務所入団と退団エピソード



中学三年の夏、部活を引退した直後――

真人は、思いもよらない出来事に巻き込まれた。
ある日、帰宅すると、姉がにやにやと笑いながら手紙を差し出した。

「真人、いい男なんだからさ。俳優になってみない?アイドルにもなれるかもよ!」

半ば強引に、真人はある芸能事務所のオーディションに応募させられていたのだった。
もちろん、真人本人は戸惑った。
自分なんかが芸能界に向いているわけがない。
何より、目立つことが怖かった。

しかし、結局、流されるようにオーディションを受けた。

そして――受かってしまった。

芸能事務所に入ってからの日々は、目まぐるしかった。

レッスン。
写真撮影。
少人数のファッションイベントへの顔出し。

真人の中に、「自分が認められた」という初めての感覚が芽生えた。
けれど、同時に違和感もあった。

周囲の少年たちは、キラキラと眩しく、
野心と自信に満ち溢れていた。

真人は、そんな彼らと自分を比べるたびに、胸を痛めた。

(僕は……ここにいるべきじゃない。)

そんな迷いが心の奥に沈殿していった。

そして、事件が起きた。

事務所内で、未成年タレントをめぐるトラブルが発覚したのだ。
真人自身は直接関与していなかった。

だが、マスコミ沙汰を恐れた事務所は、問題を起こしていない新人たちにも、
「しばらく活動休止」という形で自宅待機を命じた。
混乱の中で、真人は静かに決めた。
(これ以上、ここにいる意味はない。)
事務所に自主退団の意思を伝えたとき、

妙にあっさりと受理されたことが、心に寂しさを残した。

それでも――

真人にとっては、ほっとする決断だった。
再び、静かな世界に戻れる。

目立たず、争わず、自分らしくいられる場所へ。

そうして真人は、 高校生活へと歩みを進めていった。

表向きには何もなかったように。

しかし、心の奥には――

芸能界で垣間見た華やかさと、裏側に潜む怖さが、

小さな傷跡として刻まれていた。


 

  高校時代編



高校に入学する頃、葵 真人は、ひとつの目標を達成していた。

体重、50キロ。

身長、170センチ。

細い身体にとって、ようやく50キロ達成、17センチにも届いた。これは小さくない勝利だった。
中学時代、主将を務めた経験。
ほんのわずかながらも得た自信。
そして、かつて芸能事務所に在籍し、アイドルにもなれるかもしれなかった美貌。

恋愛は成就しなかったが――

真人は、静かに胸を張って、私立の高校に進学した。
その学校に、山岳部はなかった。

真人は、部活動に入らなかった。

芸能事務所も退団していた。

だから、誰にも縛られない「自由な高校生活」が、彼を待っていた。

放課後。

真人は、アルバイトに励んだ。
その稼ぎで――
彼は、ひそかに、ずっと興味を持っていた雑誌を手に入れた。

「SMマガジン」

そこには、強く逞しい女王様たちが、
小柄なM男性を持ち上げ、押さえ込み、プロレス技をかける写真が並んでいた。
真人は、心が震えるのを感じた。

(これだ……。)

女子プロレスを観て感じたあの衝撃と、同じ震え。

力で押さえつけられる甘美さ。

負けることへの悦び。

フィクションではない、現実に存在する「強い女性」と「敗北の快感」。

真人の胸に、確かな"居場所"が生まれた瞬間だった。

一方で、学校では――

荒くれた男子生徒が幅を利かせていた。

暴力沙汰も起きる、そんな日々。

真人は、恐怖を覚え、護身のために空手道場に通い始めた。

初めて着た道着。

初めて受けた組手。

そこで真人は、思い知らされた。

同じ道場に通う、年上の女子。

すらりとした体格に、鍛え上げられた腕。

その彼女に、真人は、あっけなく負けた。

組手が始まった瞬間、

真人の身体は、簡単に締め落とされていた。

(また……負けた。)

屈辱と、妙な安堵。

真人は、その両方を感じていた。

空手を続ける中で、真人は、少しずつ強くなっていった。

打ち方を覚え、受け身を覚え、

身体も、ほんのわずかにだが、硬さを増していた。

だが、心のどこかで、怖かった。

(このまま続けたら――

僕は、憧れの女子プロレスラーたちよりも、

強くなってしまうかもしれない。)

それは、真人にとって、最大の恐怖だった。

負けたい。

支配されたい。

あの甘美な願望が、消えてしまうのではないか。

真人は、道場を辞める決断をした。

大人たちは首をかしげた。

「せっかく素質があるのに」「続ければいいのに」

でも、真人には分かっていた。

自分は、戦うために生きたいのではない。

負けるために、惹かれているのだと。

高校生活の後半、

真人は、できるだけ目立たずに過ごした。

荒くれ者たちからは、距離を置き、

静かに、目立たぬように――

大学進学への道を目指した。

未来に、大きな期待はなかった。

ただ、

ただ、どこかで、

自分を受け入れてくれる場所があることを、

心のどこかで願っていた。

そして――

真人は、大学への切符を手にする。

細い身体で。

密かな夢と、恐れを胸に抱きながら。

彼の物語は、まだ始まったばかりだった。


 

  大学時代編



高校時代とは、まるで世界が変わったかのようだった。

葵 真人は、大学に入学すると、

その端正な顔立ちと、穏やかで控えめな性格から、たちまち人気者になった。

入学式のその日から、

複数のサークルから声をかけられた。

「うちのサークルに入らないか?」

「新人歓迎コンパ、一緒に行こうよ!」

真人は、嬉しさと戸惑いを胸に、

気づけば、三つのサークルに籍を置くことになった。

ひとつは、テニスサークル。

爽やかさが売りの、男女混合サークルだった。

コンパも多く、華やかな雰囲気。

見栄えのいい真人は、女子の参加率を上げるため、

男子学生たちから必ず誘われる存在だった。

真人自身も、多くの女子大生と自然に親しくなり、

高校時代とは比べものにならないほど、社交的な青春を謳歌していた。

飲み会、バーベキュー、スキー旅行。

人に囲まれ、笑い合う日々。

それでも――

心の奥には、誰にも言えない秘密を隠したまま。

そして、二つ目のサークル――

それが、運命をより濃くする場所だった。

プロレス同好会。

地味ながら、プロレスを愛する者たちが集う、小さなサークル。

そこでは、自由に語り合えた。

女子プロレスについても、熱く、深く語り合えた。

真人は、ここでようやく、

自分の「本当の情熱」に正面から向き合うことができた。

女子プロレス。

その力強さ、しなやかさ、闘志の煌めき。

少年の頃から抱き続けてきた憧れは、

大学生となった真人の中で、さらに燃え上がっていった。

真人は、実際に試合会場へも足を運ぶようになった。

テレビや雑誌では伝わらない、生の迫力。

技が決まったときの重い音。

観客のどよめき。

リングに立つ女性たちの、汗と涙。

真人は、胸を熱くしながら、観戦を続けた。

そして――

冴木 怜華(さえき れいか)という存在に出会った。

リング上で闘う彼女は、

美しく、冷静で、恐ろしいほどに強かった。

真人は、すぐに心を奪われた。

これまでにも贔屓の選手はいた。

だが、怜華だけは違った。

観るたびに、息が詰まるほどの感動と、

胸の奥からわき上がる甘い畏怖が、真人を包んだ。

雑誌を買い漁った。

冴木怜華の試合結果を追い、

インタビュー記事を読み込み、

ファンクラブにもすぐに入会した。

サイン会。

交流イベント。

真人は、可能な限り足を運んだ。

会えるわけでも、話せるわけでもない。

それでも、

近くにいられるだけでよかった。

怜華は、真人にとって、

理想の「強い女性」そのものだった。

大学生活は順調だった。

友人もできた。

女子にもモテた。

だが、真人の心の深いところには、

いつも、怜華の姿が焼き付いていた。

ただ、遠くから見上げるしかない、

月のような存在だった。

真人は、まだ知らなかった。

この憧れが――

やがて現実となり、

自らの運命を大きく変えていくことを。


 

  大学4年から社会人編



大学生活も、気づけば最終学年を迎えていた。

葵 真人は、静かに自分の進路について考えていた。

(どうせなら、好きなことに関わる仕事がしたい。)

頭に浮かぶのは、ずっと憧れ続けてきた世界――女子プロレス。

だが、現実は甘くなかった。

レフェリー?

リングスタッフ?

考えたこともあった。

けれど、自分が試合のそばに立つ姿を想像すると、どうしても気恥ずかしかった。

(僕には、無理だ……)

表に立つのは、自分の性分ではない。

裏方として、静かに、でも確実に関わる道を探したかった。

そんな中で、真人はひとつの道を見つけた。

編集の仕事。

デジタル雑誌の編集部に内定が決まったとき、

真人は小さくガッツポーズをした。

(これなら……いずれ女子プロレスの記事も書けるかもしれない。)

そんな淡い下心があった。

もちろん、最初は地味な雑用ばかりだろう。

だが、経験を積み、技術を磨けば、

いつか、思う存分「好きなもの」を形にできるかもしれない。

なにより、将来は起業したいという夢があった。

誰にも縛られず、

自分の信じる道を歩むために。

真人は、静かに、でも確かに未来への一歩を踏み出していた。

そんな真人を、もうひとつ支えていたもの。

それは、

冴木 怜華の存在だった。

大学三年の終わり頃から、真人と怜華の距離は少しずつ縮まっていた。

きっかけは、ファンクラブのイベントだった。

試合会場によく顔を出し、

イベントでも必ず礼儀正しく、控えめに接していた真人のことを――

怜華は、しっかり覚えていた。

(よく来る子だな。)

そんな程度だったかもしれない。

けれど、真人のまじめなオーラ。

どこか儚げで、でも一途な眼差し。

それらが、怜華の中に、少しずつ印象を刻み込んでいった。

そしてある日。

試合後の小さなサイン会で、怜華がふいに真人に声をかけた。

「いつも応援してくれてるよね。ありがとう。」

真人は、顔を真っ赤にして、

ただ「はい」とだけ、うなずいた。

その不器用な様子に、怜華は思わず笑った。

(可愛いな。)

プロレスラーとしての怜華は、強く、孤高だった。

けれど、一人の女性として――

真人のような存在は、どこか心をくすぐった。

それは、誰にも知られない、

ほんの小さな秘密の始まりだった。

・冴木怜華の紹介





男対女とバトル 格闘で女勝ち 女対女の女闘美キャットファイト
M格闘 格闘ゲーム系 M男と屈強女子の変態格闘プレイ
女子プロに逆レイプ 女王様と格闘プレイ 女子アスリート
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